ITリテラシー教育の海外の取り組み

ITの浸透は今や止めることはできない大きな流れとなっています。特に教育の現場では、このテクノロジーをどのように取り入れ、子供たちに最も効果的な知識を提供するかが大きな課題となっています。各国がどのようなアプローチでこの課題に取り組んでいるのか、非常に興味深い点が数多く見受けられます。

海外における取り組み

アメリカ・ユタ州の取り組み 子どものSNS規制

ユタ州では、SNS企業にユーザーの年齢確認を義務化し、18歳未満のアカウント利用は親の同意が必要となる新法が制定されました。これにより、保護者は子どもの投稿を確認可能で、また特定の夜間時間帯の利用を制限できます。しかし、この措置には子どものプライバシーを侵害するとの批判もある。日本のSNSでは、この規制に賛否両論の意見が飛び交っています。

世界はフェイクニュースにどう立ち向かうか

フェイクニュースが増加する中、各国でその対策が試みられています。特に、ファクトチェックの取り組みは急増し、現在、世界53カ国で149の団体、そしてソーシャルメディアでもフェイクニュースの排除を試みています。しかし、専門家は、これらの取り組みが実際に効果を持っているか疑問視しており、「バックファイアー効果」という現象も指摘されています。実際、フェイスブックはこの効果によりフェイクニュース警告を取りやめる事態となりました。

また、私たち自身がフェイクニュースを見抜く能力は必ずしも高くないことが研究から明らかにされています。米スタンフォード大学の調査では、中高生の大部分が正確な情報とフェイクニュースを区別するのに苦労していることが示され、このような背景から、メディアリテラシーの教育や啓発活動がますます重要となってきています。

スウェーデン先進事例に学ぶ

国際大学GLOCOMは、スウェーデンのソレントゥナ市の教育関係者4人を招待し、公開セミナーを実施。ソレントゥナ市は、1人1台のPCやタブレット導入を政策として実施。その成果として、生徒の成績が大幅に上昇。しかし、ただのICT導入だけでなく、ICTをどのように教育に取り入れるかが重要であることが強調されました。

このセミナーでは、ソレントゥナ市の教育方針やICTの統合方法について議論が交わされ、日本との比較やICTに対する教員の意見、保護者の反応など、多くの質問が参加者から投げかけられました。

電子国家エストニア、コロナ禍で生まれつつある“ニューノーマル”

エストニアは欧州でのPISA(国際的な学習到達度に関する調査)の成績が高い一方、政府の教育予算削減やその他の問題で教育環境は安定していません。家庭でのPC環境整備のため、「全ての子供にPCを!」プロジェクトが実施され、多くの企業や個人から寄付が行われています。

Education Nationという取り組みでは、無料で提供される北欧のオンライン学習サービスをピックアップし、教員や親のサポートが始まっており、このオンラインサービスを通じて、子供たちが算数をスポーツのように楽しむ様子も見受けられます。

しかし、リモート学習に関しては、カリキュラムの進め方や教員の役割、リソースの格差など、さまざまな課題が山積みであることも事実です。

「禁止ではなくルールを」「残すのではなく支援」 デンマーク流デジタルとの付き合い方

デンマークの学校において、スマートフォンは日常の一部となっており、多くの生徒が2、3年生から所持しています。授業中は教室内の「モバイル・パーキング」に保管されますが、授業外では学校内のフリーWi-Fiを利用して自由に使用することができます。しかし、スマホの普及と共に、デジタルいじめが増加。デンマークの9年生の16%がネット上でいじめを経験し、15%が他の生徒をいじめた経験があるという調査結果が出ています。

日本のようにスマホの使用を禁止する考えはデンマークにはなく、子供たちのスマホ使用権を尊重します。代わりに、正しい使い方やITリテラシーを教える取り組みが行われています。

子どもの心の健康を守れ、 デンマークの公立学校で進む データ駆動型生活指導

近年、子どものうつ病や自傷行為の増加を背景に、デンマークの公立学校では子どもの幸福度を把握・向上するためのアプリが普及しています。このデータ駆動型のアプローチは多くの教育者から歓迎されていますが、専門家の間ではデータのプライバシーや逆効果の可能性に対する懸念が提起されています。デンマークはデジタル化の先進国で、政府は教育分野のデジタルプラットフォームへの投資を増やしており、2021年には700万ドルがこの分野に投入されています。

デンマークの警察は、なぜ頻繁にインスタに現れるのか

2022年4月から、デンマーク警察は若者を中心にオンラインでの脅迫や詐欺被害を防ぐためのネットパトロールを始めました。警察は「若者がいる場所に行かなければ」との考えのもと、彼らとの良好な関係構築を重視し、相談しやすい環境を作っています。インスタグラムでは、警察官が楽しい動画を投稿する一方で、オンラインセキュリティや詐欺防止に関する情報も発信しています。

中国“規制地獄”を生きる子ども達の最新ネット事情

中国政府は毎年、新学期が始まる時期に様々な改革を行っています。特に注目されたのは、18歳未満の子どもたちのオンラインゲームの使用時間を週末の1時間だけに制限すること、そして学習塾やオンライン教育サービスの禁止です。この教育サービスの禁止は、宿題の答えを示すような機能が普及し、学習効果が損なわれていたことが背景にあります。この改革により、オンライン教育サービス企業は広告を取りやめ、新たな方向性を模索しています。しかし、この変化によって子どもたちがどれだけ影響を受けているのかは、SNS上の反応からも伺えます。

子どもの「ネット依存」 対策の先進国「韓国」に学ぶ

2002年、韓国で24歳の男性がオンラインゲーム中毒で86時間連続で遊んだ後に急死する事件が発生した。このような事件を受け、韓国政府はネット依存対策を強化してきました。具体的には、ネット依存者やその家族のための24時間ホットラインを設置。2011年11月からは、深夜0時から6時まで、16歳未満の子供がオンラインゲームにアクセスできない「青少年夜間ゲームシャットダウン制」を施行しました。この制度は、オンラインアクセスの制限以上に、国民にネット依存の深刻性を認識させる役割を果たしました。

世界水準の倍の伸び見込み なぜインドeラーニング市場は世界一有望なのか

インドの教育システムは、100万以上の学校と約1万8千の高等教育機関が存在し、急速に進展しています。近年、従来の対面式授業からオンライン学習へとシフトしており、特に「eラーニング」は、インドの教育の新たなトレンドとして浮上しています。

インド政府の「デジタル・インディア」プログラムの下での大規模な投資により、インドのeラーニング市場は急成長し、すでに米国に次ぐ規模に。さらに、インドの教育インフラがITニーズに応えられるよう強化される中、「デジタル・インディア」の一環として、これまでインターネットにアクセスできなかった層にもその普及が期待されています。

海外と日本との比較データ

世界の子どものネットリテラシーやオンラインいじめなどの調査データを公開

文部科学省の調査データによれば、日本の子どものネットいじめが急増していることが明らかになっています。近年5年間でネットいじめの件数は大幅に増加し、2019年度には過去最多の件数を記録。いじめ全体の認知件数も同様に過去最多を更新しています。

ICT教育先進国はどんな国?授業内容事例3つとデジタル教材の特徴3つ

日本では、2020年から小学校でのプログラミング教育が必修となり、教育界はICT化に向けた取り組みを進めている。世界には多くのICT教育先進国が存在し、今回はオーストラリア、デンマーク、エストニアの3カ国にフォーカスしてその特徴を紹介しています。

日本とどう違う?海外のIT教育への取り組み

日本のモバイル端末の保有率は高く、世帯で94.8%、個人で84.0%となっており、ITとの関わりが深まる中での昨今の教育改革は時宜を得たものと言えます。将来的には、IT技術を駆使する能力が求められることが予想されるため、小学校でのIT教育の導入は避けて通れない流れとなっています。このITの普及と教育への取り組みは、日本だけでなく、世界中で見られる動きになっています。

欧州7ヵ国 子どものスマホ・ケータイ利用レポート(PDF資料)

ベルギー、デンマーク、アイルランド、イタリア、ポルトガル、ルーマニア、イギリスなどのヨーロッパの7ヶ国における子供たちのスマートフォンや携帯電話の使用状況に関する調査結果です。

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